行秋日記(22)...




今回の伊豆への小旅行の目的は IZU PHOTO MUSEUM で開催中の 「小島一郎 北へ,北から」 展を観に行くこと.
決して美味いもの食べではない ヽ(´~`; ォィォィ

JR三島駅から車で15分くらいのところにあるクレマチスの丘という美術館,レストラン,本屋などが散在する広い面積の施設.気持ちのよい緑あふれるエリア.スルガ銀行の持ち物で,本社機能の一部もこの地域rにあるという.三島駅からシャトルバスが出ているが,平日は17:00最終.土日は16:40最終.三島駅への最終は17:20だから,施設を廻って,ディナーをとってから帰るとなると,タクシーを呼ばなくてはならない.
ここにあるリストランテ 「Primavera」 は箱といい,料理といいすばらしい.日高シェフが去って後,エルブジの経験のある黒羽シェフによる北イタリアを中心とした実にセンスのいい美味い料理だ.あの値段でやっていけるのだろうかと心配してしまうほどに質のよい料理だ.ドルチェがまた美味い.ああ,また食べに行きたい.


小島一郎という写真家の名前はいまだにあまり一般的ではないのかも知れないが,彼の写真をどこかで見た方は多いのではないかと思う.1924年に青森で生を受け,39歳という若さで世を去った異能の作家.
津軽,青森に拘った彼の才能は名取洋之助に出会ってさらに磨きがかけられたという.
彼の作風は,ピクトリアリズムを徹底的に排した当時のリアリズム一辺倒写真界とは対極の場にあった.
造形のイマジネーション,センス,津軽という土地の臭いの出し方,現像,焼き付けの写真技術を十分に熟知した造形美の創出はピクトリアリズムの新たな段階を見せた作品ばかりで,見たものを強く惹きつける.
他界するまでの間,彼は名取の食客として遇されてきたようだ.



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      Leica M9+Summicron-M 50mm F2 (6枚玉)











オリジナルの彼の作品を観ると,すさまじいまでに粒子を荒らし,暗部をぎりぎりまでに落とし,対照的に明部を強調した技術は津軽の厳しい自然を表すにはこれしかないと思わせる演出である.ミレーの晩鐘を彷彿とさせるあの津軽木造の稲刈り,稲垣付近の吹雪の中を行く人々などの代表的作品を目の当たりにすると言葉がないほどの感動を与えてくれる.雲の表現がまたぐっとくる.
展示の最後の方は,再プリントのボードが掲げられているが,この焼き付けはよくない.
彼がいつも懐に入れていたと言われる名刺判の通称「トランプ」と称するポートフォリオ.これが多数展示されているのも面白い.この作品群から彼の写真作法一端をうかがい知ることもできる.

小生が真の写真芸術家と考える5人の日本人作家の一人である小島一郎の画を見ることができた幸せよ!

本写真展は,没後50年を記念してのもので,新潮社から出版されていた生前唯一の写真集 「津軽」 も復刊予定.
写真展は12月25日まで開催.ぜひ,足を延ばしてご覧ください.

写真は,IZU PHOTO MUSEUM の入り口.写真展の看板が慎ましく出ている.
Commented by cobag2 at 2014-10-25 19:12
あぁ、入り口のこの木はもうこんなにも紅くなってしまったのですね〜^^
私がご隠居の情報で出掛けたのが 9/30 ですから一ヶ月も経っていないと云うのに。
Primavera、次回はぜひ寄ってみようと・・・・^^
小島一郎と云う写真家のエネルギー、津軽に向けられた愛情、己の寿命を
知ってか頑なまで写真に叩きつけつづけた情熱、このバイタリティを
私も持ちたい^^
Commented by Neoribates at 2014-10-26 09:06
cobag2さん,
ええ,やはりちょっと小高いところにあるだけでこんなに違うんですね.植物によってはほんとうに綺麗に紅葉しているものもチラホラありましたよ.プリマベーラ,ぜひ行ってみてください.箱もセンスの良い開放感のある造りでグーです.
小島一郎のあのエネルギーをオリジナルプリントはこちらに訴えて来ますね.たしかな技術と執念ですね.それに豊かな絵心.すばらしかったです.
Commented by camellia-02 at 2014-10-26 14:20
2011年3月、NHKの日曜美術館で放映された小島一郎をあらためてDVDを見てみました。
中央への夢を抱きながらの作品作りの苦悩を感じとる事が出来ました。
東京へ出て個展を開き、その作品を木村伊兵衛に酷評され、
東京の生活に慣れることなく、2年足らずで東京を去り、北海道に渡り亡くなるわけですが、
歩き続けていた小島一郎が、もし生き続けていたら、偉大な写真家になっていただろうと、思います。
Commented by Neoribates at 2014-10-26 16:45
camellia-02さん,
木村や土門などには嫌悪の対象のようでしたね.彼らの写真とてリアリズムと言っているけど,しょせん演出写真でしかない.写真なんて撮ったその瞬間から演出が加えられているのですから.それをさらに様々な方向から演出を加え,より芸術的に引き上げるかどうかで価値はきまるのだと小生は思っています.
彼の生きた時代があまりにも彼にとって合わなかった... 口惜しいですねぇ.
ああ,思い出したのですが,NHK日曜美術館では,確か藤原新也も小島を酷評してましたね.まったく自分の撮っているものと異なる方向性の写真だとして嫌悪感を示すようで,彼のアーティストとしての懐の浅さを感じた次第でした.
Commented by camellia-02 at 2014-10-26 18:22
Neoribatesさん
番組の後半で、藤原新也は青森県立美術館の小島一郎の写真展に行き、小島一郎のべた焼を見て、
小島一郎の撮り方を考察して 認識を変え 早く亡くなった小島一郎を 惜しんでいました。
私見ですが、小島一郎は、自身の写真の選び方が変わっていたら、
東京での個展では、高い評価を得たのではないかと 思います。
写真を撮る才能と 写真を選ぶ才能と 両立出来る事が、プロには 要求されるのだと、感じています。
Commented by Neoribates at 2014-10-26 18:31
camellia-02さん,
藤原新也の小島に対する評価の片側しかここには記さなかったのが不十分でした.東京での個展については仰るとおりだと思います.彼自身の意志がどこまで入っていたのか,そうでないのかが気になります.ただ,大きい勢力の中での切り込みは大変だったろうと想像に難くはないですね.
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by Neoribates | 2014-10-25 17:50 | Leica M9 | Comments(6)

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