穂張月日記(6)...















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   サルベージフォト2017

   Paesaggio con una bottiglia ghiacciata II...
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   Leica M10+Summilux-M 50mm F1.4 Asph. LHSA










ワクチンの有効性についておさらい(1)

1.ファイザー(コードネーム: mRNA-1273)
 a)年齢別抗体価の経時変化1
  国立病院機構宇都宮病院の378人を対象とした研究で,米ファイザー製ワクチンについて2回目接種から3カ月後の抗体価を喫煙とも絡めてトレースした...
 1.60~70代が20代の半分しかない(グラフ縦軸)
 2.喫煙者は非喫煙者よりも35%以上も抗体価は低い
 3.喫煙履歴有りは23%低い
という結果が出たと8月6日に発表している(プレプリント).
 更に,研究チームは高齢者は半年おきのワクチン再接種が必要で,禁煙は感染リスクを軽減できるとしている.

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                       8/14 東京新聞オンライン版より


抗体価の経時変化については少し前にすでに言及されていたが,上に示した国立病院機構宇都宮病院ほどの低下率ではなかった...

 b)ファイザーの抗体価経時変化2
  ファイザービオンテックのCEO Ugur Sahin氏は,7/26にウォルストリート・ジャーナルのインタビューに答えて,「2回目の接種から6~9か月後その後は12~18か月ごとにワクチンをもう一度接種する必要があるかもしれない」と語った.これは,6月に開催されたBarron’s Investing in Techカンファレンスで述べたもので,「ワクチンを接種した人の抗体反応は2回目の投与後4~5か月間安定しているが,6か月で抗体レベルが低下し始める」との内容である.
  →CEO Says Vaccine Is Growing Less Effective, but Still Prevents Severe
   Disease.
  この発言の基になった研究は,イスラエルのLeumit研究所の研究で,ファイザー製のワクチンは,2回接種後,6か月後に抗体が40%程度になるということが報告されている.これは,約2,000人のワクチン接種者の約5ヶ月間のデータを基にして算出されたもので,このことからブースター接種の必要性が言われ始めた.

  7月23日付のイスラエルの「i24」紙は,ワクチン接種が開始された2020年12月以降,接種した月が早いほど効果が下がっているとした保健省の調査結果を報じた.感染抑止の面での有効性は...
  1月接種:16%
  2月接種:44%
  3月接種:67%
  4月接種:75%
と6ヶ月後を経過した1月接種群では,感染抑止の有効性16%とかなり減少している.
ただし,重症化抑止の観点では、1月の接種者も引き続き86%の有効性を保っており,2月以降の接種者との差はわずかだとしている.

2.モデルナ(コードネーム: BNT162b2)
 5月10日にNew England Journal of Medicineで公開されたMat Makowski et al.による Antibody Persistence through 6 Months after the Second Dose of mRNA-1273 Vaccine for Covid-19 | NEJM と題する報告で,モデルナ社が実施した最初の臨床試験(第1相)に参加した33名の健常人において,血中の中和抗体活性を2回目接種後14日目,90日目および6ヶ月(180日)目に測定した結果を発表した.

 1)時間と共に徐々に低下はするが,6ヶ月(180日)目においても33名全員におい
  て十分な中和活性(縦軸)が維持されている
 2)中和活性は年齢層が若いほど高い
 3)中和活性の半減期は2つの計算方法により異なるが,68日もしくは202日と推
定された

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                             山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信より


3.アストラゼネカ(コードネーム: ADZ1222)
 経時変化については,3ヶ月は最低でも発症予防は有効だということくらいしかわからなかった.長期にわたる有効性は現在各機関で調査中のようだ.




Commented by イチロウ at 2021-08-24 08:16 x
詳しい調査ありがとうございました。ところでJ&J のワクチンはどうなったのでしょうかね?何れにしてもしばらくは半年ごとのワクチンが必要ということになりそうですね。
Commented by minton at 2021-08-24 17:08 x
国産ワクチンもそろそろ出てきそうな雰囲気ですね。
今後の定量確保を考えると輸入は厳しいです。
台湾が自国生産できたことは素晴らしいです。
Commented by Neoribates at 2021-08-24 20:07
イチロウさん,
ワクチンの有効期間,抗体価低減などの研究結果の数値は,条件の違いあり,それこそ研修者によってかなりの幅があるので,なんともどれが正解なのか判断しにくいところがあります.白と黒ほどの差はないですが.ただ,初期の研究では白黒くらいの差のレポートはいろいろありましたが.
ただ,いずれにしてもファイザーとモデルナを比較すると,モデルナ製の方がおしなべて成績がよいとはいえます.副反応はけっこうな確立でモデルナは出ますが,それを承知していればどうということはないですね.
アストラゼネカはどうも研究が少ないのでなんとも...
日本製ワクチンの早い登場が期待されます.それに治療薬ですね.争奪戦で入るかは入らないかわからないような状態では安全保障という観点からもきちんと備えておかなかった政府の怠慢です.
J&Jのワクチンは,第3層では死亡例もないようでした.一部で血栓の報告があったようですが.JJのワクチンは単回使用で済むし,保管温度もやりやすい,それに格安ということですが,どうもいくつかの報告を見ると,中和抗体の有効性が低いらしいですね.特にδに対しては.だから別のワクチンと交差接種をしなければなんていう話もあるようで.
Commented by イチロウ at 2021-08-24 22:06 x
何れにしても何回も追加接種が必要なのだから、J&Jも1回などとは言わなければよかったと感じます。ただし、アストラゼネカ製もJ&J製もバイラルベクターを使用していることが足枷なのかもしれませんね。もっとベクターを工夫して簡易投与法を選択すればDNAワクチンも効果的に使用できるのではと考えています。くだんの疥癬治療薬ももう正確な知見を而して少しでも効果が明確になると良いのにと思います。パラピックも始まりましたし、今後しばらくは( おそらく数年)は変異株の出現も含め、感染との戦いが持続するでしょうね。
Commented by Neoribates at 2021-08-24 22:36
mintonさん.
なんといっても国産ものを持たないとどうしようもないですよね.政府のワクチン恐怖症が招いた現状ですね.保健所の閉鎖などという失策のおかげでいざ感染症が広がったときにどうしようもなくなっている.
ようやく昨日の会見で特措法に基づく医療機関への罰則(と言っても大したものではないので,応じない病院などはどうってこともないのでしょうが)付き要請を国と都が出しましたが,屁の役にも立たない罰則じゃぁどうってことないでしょう.橋下氏が言っているように,保険医から外すなどの実質的罰をくわえないと,税金だけぶんどって何もしない医師がたくさんいるという実態は変わりませんね.
Commented by Neoribates at 2021-08-24 23:07
イチロウさん,
バイラルベクターの技術は,過去の様々なシーンで使われてきているので,そんない大変なことなのかなぁとシロウトは考えてしまいますが,なかなかそうはいかないのでしょうねぇ.
イベルメクチンの使用については,当局もかなり柔軟な対応をしているようですね.早期症状なら18mmgを毎日1回,5日間で良い方向に向かうとFLCCCなどでは指針を出しておりますが,臨床成果のきちんとした論文が欲しいところです.
仰るとおり,第1ラウンドのワクチン接種でどうなるかを見て,第2ラウンドに入るということなんでしょう.数年はこの繰り返しのような感じですね.
Commented by イチロウ at 2021-08-25 08:39 x
バイラルベクターはいままでは希少疾患の治療法として少数の患者様への臨床経験しかないと思います。そもそも遺伝子治療自体が今まではほとんど禁止状態に近かったのに、コロナ感染で一気に解禁になったというのが実情です。ですから、mRNAワクチンがこれほど効果があって今の所、大きな副作用(どうして日本は副反応などという医学用語ではないヘンテコな言葉を作り出すのでしょう!)が多数発症せずに来ているのは奇跡とも見えます。何年か後の副作用の有無は神のみぞ知るです。ちょっと前までは確か米国では遺伝子治療はカリフォルニア州でだけ可能だったのですよ。私も遺伝子治療の研究を動物実験でして来ましたが、バイラルベクターは導入効率が良いので一時期使用しましたがやはり臨床で使用するのには現実的ではない(人では使えないと考えて)、plasmidをベクターにしました。現在、世界中でそういう意味でも壮大な実験が進んでいるということになりますね。その観点では今後の人生が長い若い世代の人々がワクチンを受けた真名井というのもそれなりの根拠があるわけです。
Commented by イチロウ at 2021-08-25 08:49 x
それとアデノウイルスベクターでは1度目は導入効率良いのですが、2度目以降は免疫機構でベクター自体が排除されてしまうので、ワクチンとしての効果が落ちます。それでバイラルベクターを使用するJ&Jは1回投与なんだと思います。J&Jは生真面目な会社ですから。その点でアストラゼネカは2回投与と言っていて(それで期間を開けての投与なのでしょうね)、個人的には如何なものかと思っていました。何れにしても医学研究者から見れば綱渡り治療です。振り返ってみればそのような綱渡をする度胸のある研究者や製薬会社が日本の風土では皆無ということなのでしょう。コンベンショナルなワクチンをシオノギさんが開発しているようですが、実用化には日本での承認手続きの煩雑さも加えて、これから2-3年はかかるのではないでしょうか?
Commented by Neoribates at 2021-08-25 11:07
イチロウさん,
バイラルベクターについての認識が薄かったので,解説頂いて勉強になりました.遺伝子治療は一時マスコミに華々しくとりあげられたりしましたが,たしかに国会などでも取り上げられ,いろいろな制約がかけられていますね.医科学研究所の石井教授らの研究にその制約がかけられたという話を思い出しました.まさにこの戦時下だからこそドアが開けられたということなんでしょう.副作用については陰謀論者やもともとの宗教絡みのワクチン否定派が長期スパンでの影響をいろいろと語ってますが,仰るように,なってみなれければわからないというギャンプルの側面はありますね.かと言って,自然免疫の獲得を待つなんてことはできませんからねぇ.JJは自己免疫による2回目以降の問題を考えて単回接種をとったということですか.中和抗体価がはかばかしくない数値の場合は,mRNAワクチンの追加接種でそのあたり凌ぐというのでしょうかねぇ.
科学技術は戦争が進化させるということも真理なので,この戦時において広い意味での遺伝子技術,遺伝子医療の研究,応用は加速されると考えることはできるのでしょうか.
仰る「綱渡り」をある時点では肝を据えてやるしかないのだろうと思います(門外漢の戯言ですね).
塩野義製薬のコンベンショナルなワクチンは安全性は高いのでしょうが,変異体への即応性に不安があります.国産の遺伝子ワクチン,例えばアンジェスなどの開発にもっと国としてお金をつぎ込む体制をとってもらいたいものです.
Commented by イチロウ at 2021-08-26 07:44 x
確かに ""「綱渡り」をある時点では肝を据えてやるしかない"" 時代だと思いますし、今までとぞされていたドアを開けてその技術に頼らなくなったというのも事実でおっしゃる通りです。今はその技術に頼らざるを得ないのです。あと、一般論ですが、株価を操作することのみが目的のような会社には国のお金をつぎ込んでも新しい本当に役に立つようなものを開発して製品化することはできませんので、無駄だと思っています。
Commented by イチロウ at 2021-08-26 07:51 x
>科学技術は戦争が進化させるということも真理なので,この戦時において広い意味での遺伝子技術,遺伝子医療の研究,応用は加速されると考えることはできるのでしょうか.

この点はその通りで、おそらくはmRNAの実用化は今後の医療に劇的な変化を与えるでしょう、さの投薬実用化した女性の科学者は本当にノーベル賞に値する素晴らしい成果を出していただけたと感服しています。
Commented by イチロウ at 2021-08-26 08:59 x
J&J Janssenのワクチンもsecond shotを治験中で9倍の中和抗体が得られると言い始めました。2回目の投与は8ケ月後だそうです。ベクターへの免疫反応はどう解決するのでしょうか?何れにしてもさらに新しい技術導入が期待されますね。
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by Neoribates | 2021-08-22 19:21 | Leica M10 Typ 3656 | Comments(12)

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